小説 日本買収―巨大外資に呑みこまれる日 (ノン・ノベル)

外資系投信の日本人ファンド・マネージャーを主人公に、日本の名立たる大手企業の買収・合併・提携を強引にも押進めていく彼の奔走ぶりを描く。日本企業は株主を無視する経営体質だが、アメリカの企業は株主の権力は絶大で、業績が悪化すればアメリカ企業のトップは株主の圧力によって首を切られる。まさに企業投資家が経済界を動かしているとも読み取れる。その投資家の為に企業への影響力を行使するのがファンド・マネージャーという職種だ。この小説のテーマは、今の日本企業の鈍重さや古臭い体質の数々を指摘しつつ、外資系企業の合理的経営力・決断力の速さなどの外資系の優位さを教えてくれる。自分の実力さえあれば必ず出世していける。例えば、日本のある玩具メーカーがたったひとつの商品が爆発的なヒットしたおかげで業績が立ち直った。その商品を開発したのは女子社員で彼女は一万円程昇給しただけらしいが、外資系であったならばまちがいなくその女子社員は役員になり年収もゼロがひとつ増える待遇になっているはずだという。その他、確定拠出年金制度（日本版４０１Ｋ）や郵政民営化などを、この小説が発表されたのは１９９８年だがそれらを既に予見していてリアルだ。